BB肥料用語集
BB Fertilizer Glossary
あ行
EC(いーしー)
土壌中には作物の栄養分となる物質が「塩」の形で存在しています。塩とは、酸と塩基の化合物のことをいい、肥料でいうと硫酸アンモニウムや硝酸アンモニウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウムなどがあります。塩は水に溶けるとイオンになって電流が流れやすくなります。この電流の流れやすさを示すのがEC(電気伝導度)です。ECの値が高ければ高いほど、土壌中に塩類、つまり肥料分がたくさんあることを示します。
ただし、ECは高ければ高いほど良いわけではないことに注意が必要です。ECがあまり高いと塩類集積と呼ばれる現象が起こっている可能性があります。塩類集積により、必要以上に塩類濃度が高くなっていると、肥料焼け(塩類濃度障害)を起こし、根がしおれたり枯れたりしてしまって、水分を吸収できなくなってしまいます。この問題は水を湛水する水稲では通常起こりません。
AN(えーえぬ)
アンモニア性窒素のことを指します。水稲等はANを好んで吸収します。
アンモニア性窒素を好む作物:水稲、レタス、大麦、茶など
液状肥料(えきじょうひりょう)
液肥とも呼ばれ、肥料成分を水等に溶かした液体状の肥料のことを指します。一般的に速効性で、施設園芸での潅水や、近年では省力化技術として水稲の追肥場面で流し込み施肥として使用されることもあります。
NN(えぬえぬ)
硝酸性窒素のことを指します。一般的に、野菜などの畑作物はNNを好んで吸収します。
硝酸性窒素を好む作物:キュウリ、トマト、タマネギ、バレイショ、ハクサイ、ダイコン、キャベツ、アズキ、ダイズなど
か行
化成肥料(かせいひりょう)
肥料または肥料原料を使用して、これに化学的操作(化学的反応)を加えたもの、あるいは原料肥料の2種類以上を混合し造粒または成形したものです。
可溶性(かようせい)
植物が吸収・利用できる肥料成分です。効果は水溶性よりはゆっくり効きますが、ク溶性よりは速く効きます。日本の公定規格では、可溶性リン酸(S-P)、可溶性ケイ酸(S-Si)、可溶性苦土(S-Mg)、可溶性マンガン(S-Mn)が保証されています。
加里(かり)
肥料の3要素の1つで「K」で表します。硝酸の吸収、体内での還元、タンパク質の合成に関与します。また、作物の病害虫の抵抗性を増大するほか、開花・結実を促進します。
緩効性肥料(かんこうせいひりょう)
化学合成緩効性肥料は、含まれる肥料成分を水に溶けにくいものにし、施用後の分解を遅らせて、効果が出るスピードを緩やかに長期間に渡るようにした肥料です。主に窒素質肥料ですが、他の種別の肥料もあります。
苦土(くど)
肥料の必須元素の1つで「Mg」で表します。光合成をおこなう葉緑素を構成する要素のひとつです。炭水化物やリン酸の代謝などに関与する多くの酵素の活性化に関与するほか、一部の酵素を構成します。リン酸の吸収、体内移動に関与します。
苦土肥料には硫酸マグネシウム肥料、水酸化マグネシウム肥料などがありますが、単独で使用するよりは他の肥料に混ぜたものを使用する方が多い傾向にあります。また、石灰質肥料には苦土を含むものが多いです。
苦土加里比(くどかりひ)
土壌中の苦土と加里の比率で計算されます。石灰の吸収は苦土、加里の多用で抑制され、苦土の吸収は加里、石灰の多用で抑制され、加里の吸収は石灰、苦土の多用で抑制されます。石灰苦土比と併せて塩基バランスと呼び、このバランスが崩れると土壌中に十分な成分があっても作物に吸収されにくい状態となってしまいます。
ク溶性(くようせい)
植物が吸収・利用できる、2%クエン酸水溶液に溶解する肥料成分です。効果の出るスピードは緩やかです。日本の公定規格では、ク溶性リン酸(C-P)、ク溶性カリ(C-K)、ク溶性苦土(C-Mg)、ク溶性マンガン(C-Mn)、ク溶性ホウ素(C-B)が保証されています。
ケイ酸(けいさん)
「Si」で表されます。肥料の必須元素ではありませんが、水稲を中心とするイネ科植物はケイ酸をよく吸収し収量が増加することが多いため有用元素と呼ばれます。
主として水稲に施用され、①光合成能力の向上、②根の活性の増加、③耐病性の向上、④耐倒伏性の向上、⑤品質の向上、といった効果があります。
公定規格(こうていきかく)
肥料法にもとづき普通肥料の種類ごとに農林水産大臣が定める規格です。
高度化成(こうどかせい)
化成肥料のうち、窒素、リン酸、加里の保証成分の合計量が30%以上のものを指します。
固結(こけつ)
肥料の粒同士がくっついてしまう現象のことを指します。固結がおこると施肥機がつまるなど、肥料の散布に支障をきたすことがあります。固結の原因には水が関係していることが多く、肥料袋内の湿度が高い、水分が入り込むなどすることで固結を起こします。
固結防止材(こけつぼうしざい)
固結を防止するため、BB肥料では吸湿性の高い原料(シリカゲルや苦土重焼燐)を使用するといった対策がとられてきました。平成26年の法改正により、固結防止材のBB肥料への使用が認可され、一定の条件下で使用できることとなりました。JAグループでは安価な固結防止材として滑石粉末(タルク)の使用をすすめています。
さ行
CEC(しーいーしー)
土壌中にある鉱物や腐植は電気を帯びています。肥料は土壌に施用され、水に溶けるとプラスの電気を帯びます。このときマイナスの土壌はプラスの肥料成分を引き寄せ、肥料成分が流れ出ることを防いでくれます。この土壌の帯びるマイナスの電気の大きさをCEC、陽イオン交換容量と呼びます。つまりCECは土壌が肥料を保持する力を表します。
指定混合肥料(していこんごうひりょう)
令和2年12月に「肥料取締法」が改正され、「肥料の品質の確保等に関する法律」となりました。そのなかで新たな枠組みとして設定された肥料です。
今までの配合肥料は登録された普通肥料同士を混ぜることしかできません(指定配合肥料)でしたが、今後は普通肥料と特殊肥料、普通肥料と土壌改良材、特殊肥料と土壌改良材を混ぜることが可能となりました。これを総称して指定混合肥料と言います。
なお、指定配合肥料は、指定混合肥料の1つに位置付けられました。
硝酸化成抑制剤入り肥料(しょうさんかせいよくせいざいいりひりょう)
窒素肥料のうちアンモニア性窒素を畑土壌に施用すると、アンモニア性窒素は化学変化し、硝酸に変化します(=硝酸化成)。硝酸よりもアンモニアの方が土壌に保持されやすいため、硝酸化成がすすむと、水に溶けて土壌から流れ出たりし、窒素成分は減少していきます。尿素や有機物由来の窒素の場合も一度アンモニア性窒素に変化した後は同様に硝酸に変化し、土壌から抜け出ていきます。
この変化は微生物によるものですが、アンモニアを変化させる微生物の働きを抑える薬剤があります。この薬剤を使用することにより窒素は変化せず、土壌から流れ出ることが少なくなり、窒素成分の効果が持続しやすくなります。
代表的な硝酸化成抑制材としては、ジシンジアミド(Dd)があります。
処方箋(しょほうせん)
土壌診断の結果をまとめたシートです。分析値が目標値に対して高いか低いか、改善するにはどうすればよいかが記載されています。
水溶性(すいようせい)
水に溶ける肥料成分です。効果は速効的です。日本の公定規格では、水溶性リン酸(W-P)、水溶性加里(W-K)、水溶性苦土(W-Mg)、水溶性マンガン(W-Mn)、水溶性ホウ素(C-B)が保証されています。成分表示としては可溶性もしくはク溶性の内数として表示される場合が多いです。
石灰(せっかい)
植物の細胞の骨格を作る他、酸性に傾いてしまった土壌を矯正するために施用されます。主成分はアルカリ分で表示されています。
日本のように雨が多い国では土壌が酸性に傾くことが多く、加えて、肥料を多量に施用することでより強く酸性に傾きます。この土壌の酸性を中和するために石灰等が利用されてきました。
石灰質肥料は鉱物を原料としている場合が多いです。また普通肥料の石灰質肥料のほか、特殊肥料の粗砕石灰石、貝殻肥料、貝化石粉末、製糖副産石灰、石灰処理肥料なども石灰質系の肥料です。
石灰苦土比(せっかいくどひ)
土壌中の石灰と苦土の比率で計算されます。石灰の吸収は苦土、加里の多用で抑制され、苦土の吸収は加里、石灰の多用で抑制され、加里の吸収は石灰、苦土の多用で抑制されます。苦土加里比と併せて塩基バランスと呼び、このバランスが崩れると土壌中に十分な成分があっても作物に吸収されにくい状態となってしまいます。
た行
単肥(たんぴ)
窒素、リン酸、加里のうち1成分のみを保証する肥料をいいます。
窒素(ちっそ)
肥料の3要素の1つで「N」で表します。植物の生育を促進し、養分吸収、アミノ酸を生成して植物体を作る作用などを盛んにします。窒素全量はTNで、アンモニア性窒素はANで、硝酸性窒素はNNで表します。AN、NNのどちらを好んで吸収するかは作物によって異なります。
追肥(ついひ)
作物の生育に合わせて生育途中で施用する肥料のことです。速効性の肥料を用いて基肥で全ての肥料を施用すると収量が低下したり、作物に障害が出たりするほか、作物による吸収や土壌から流れ出ることなどにより、生育中に肥料成分が不足することがあります。
特殊肥料(とくしゅひりょう)
特殊肥料は、米ぬか、たい肥、動物の排せつ物のように、農林水産大臣が個々に指定したもの(令和2年1月現在46種類)です。生産・輸入をする場合には都道府県知事に届出が必要です。
特殊肥料として認められるには①農家の経験と感覚によって識別できる、②成分量のみに肥料の価値を依存しない、という要件が必要です。
特殊肥料には保証票添付の義務はありませんが、肥料の種類ごとに表示しなくてはならないこと、守らなくてはならないことが定められています。
土壌診断(どじょうしんだん)
土壌のサンプルを採取し、専用の試薬や機材を用いることによって土壌に含まれる肥料成分やpH、EC、CECなどを分析することを言います。
こちらも参照。
は行
配合肥料(はいごうひりょう)
肥料(単肥または化成肥料)を2種類以上混ぜ合わせた(配合した)肥料です。
肥効調節型肥料(ひこうちょうせつがたひりょう)
肥料成分の溶出を何らかの方法で抑えた肥料です。被覆肥料、硝酸化成抑制剤入り肥料、緩効性肥料に分けられます。
被覆肥料(ひふくひりょう)
被覆肥料(コーティング肥料)は透水性の低い被膜(樹脂、イオウ等)で肥料粒の表面を覆って成分の溶出を遅らせたものです。主に尿素を被覆したものが多いですが、化成肥料や硫酸加里などを被覆した肥料もあります。
肥料成分の溶出の制御は、被覆膜の厚さを変化させる方法と、被覆素材の種類と量を変化させる方法があります。
溶出のパターンは2種類あります。初期の溶出を比較的多くしたタイプ(リニア型)と初期の溶出を抑えて後期に溶出が増加するタイプ(シグモイド型)です。
肥料の保証成分(ひりょうのほしょうせいぶん)
日本の農耕地では窒素、リン酸、加里、苦土、ケイ酸、ホウ素、マンガン以外は作物生育で不足することがあまりありません。そのため、イオウ、鉄、銅、亜鉛、塩素、モリブテン、ニッケルは肥料の保証成分となっていません(鉄、銅、亜鉛、モリブテンは効果発現促進材)。
複合肥料(ふくごうひりょう)
窒素・リン酸・加里のうち2成分以上を保証する肥料をいいます。
普通化成(ふつうかせい)
化成肥料のうち、窒素、りん酸、加里の保証成分の合計量が10~30%未満のものを指します。
普通肥料(ふつうひりょう)
肥料法では特殊肥料以外の肥料を普通肥料として定義しており、種類ごとに公定規格が定められています(令和2年1月現在150種類)。生産・輸入をする場合には銘柄ごとに肥料登録が必要となります。登録を受けた普通肥料同士を混ぜ合わせた肥料を「指定配合肥料」と言います。
粉化率(ふんかりつ)
肥料が砕け、粉末になる割合を示したものです。粉化率は原料の種類ごとにおおむね決まってきますが、原料の質によっても変わってきます。肥料袋中に粉末が多くなると固結の原因となる他、施肥機の目詰まりの原因にもなります。
ペースト肥料(ぺーすとひりょう)
肥料原料を粉砕し副原料と混ぜ合わせてペースト状にした肥料のことです。形状は若干粘りのあるソース状です。近年では園芸作物用のものも開発されていますが、日本ではほとんどが水稲の側条施肥に用いられています。施肥には専用の施肥機を田植機につける必要があります。
pH(ぺーはー)
水素イオン指数のことを指します。pH7を中心として土壌の酸性とアルカリ性の強さを表します。値が小さいほど酸性が強くなり、値が大きいほどアルカリ性が強くなります。作物によって好むpHは異なります(ホウレンソウは6.5~7.0程度の中性、ブルーベリーは5.0程度の酸性を好む等)が、一般的には6.0~6.5程度の弱酸性を好むと言われています。多肥や降雨によって酸性に傾き、石灰等のアルカリ資材を多用しているとアルカリ性に傾きます。適正値から外れる場合は酸度矯正をおこなう必要があります。
ホウ素(ほうそ)
肥料の必須元素の1つで「B」で表されます。植物体を構成するアミノ酸であるリグニン、ペクチンの形成に関与し、細胞膜や通導組織(水分や養分の通り道)の形成・維持、水分・炭水化物・窒素の代謝に関係し、酸素を不活性化します。また、花粉の発芽や花粉管の成育に関与します。
ま行
マンガン(まんがん)
肥料の必須元素1つで「Mn」で表されます。葉緑素の形成に関与し、光合成過程における水の分解と酸素の発生に関与します。また、酸化還元などにおける酵素の働きを活性化させる役割を持つビタミンCの合成に関与します。
基肥(もとごえ)
播種や移植の前に施用する最初から効かせる肥料のことです。
や行
要素障害(ようそしょうがい)
作物の生育に必須な要素が土壌中に不足していると作物に起こる様々な障害のこと。
こちらも参照
ら行
粒状配合肥料(りゅうじょうはいごうひりょう)
粒状の肥料(単肥または化成肥料)を2種類以上混ぜ合わせた肥料(=BB肥料)です。
リン酸(りんさん)
肥料の3要素の1つで「P」で表します。植物の生長、分けつ、根の伸長、開花・結実を促進します。
リン酸は土に吸着され、固定されやすい性質があります。火山灰土壌の圃場ではリン酸を固定する力が大きいため、吸着されやすい水溶性リン酸より、徐々に溶けるク溶性リン酸を多く含む肥料のほうが、効果が優る傾向にあります。